ラグビーワールドカップ2019 ニュージーランド対イングランド イングランド圧巻の勝利 エディーの目線は決勝へ

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10/26(土)ラグビー界に衝撃が走った。

ワールドカップ3連覇に向けての勝利の階段を悠々と昇るかと思われていたニュージーランドが準決勝でイングランドの前に散ったのである。

イングランドの試合運びは圧巻で勝利にふさわしい内容であった。

登録メンバー

オールブラックス

1.ジョームーディー 2.コーディーテーラー 3.ネポラウララ 4.ブロディーレタリック 5.サムホワイトロック 6.スコットバレット 7.アーディーサヴェア 8.キアランリード 9.アーロンスミス10.リッチーモウンガ 11.ジョージブリッジ 12.アントンレイナートブラウン 13.ジャックグッドヒュー 14.セブリース 15.ボーデンバレット

16.デインコールズ 17.オファトゥンガファシ 18.アンガスターバオ 19.パトリックトゥイプロトゥ 20.サムケイン 21.TJペレナラ 22.ソニービルウィリアムス 23.ジョーディーバレット

前の試合アイルランド戦からの変更点は、7番だったサムケインをベンチに下げ、代わりのフランカーとしてスコットバレットをスターティングメンバーに入れている点。

スコットバレットがフランカーで出場しているシーンはあまり見ないため、この変更はスコットハンセンに何か意図があることが伺える。

イングランド

ラグビーイングランド代表 ロゴ

1.マコヴニポラ 2.ジェイミージョージ 3.カイルシンクラー 4.マロイトジェ 5.コートリーローズ 6.トムカーリー 7.サムアンダーヒル 8.ビリーヴニポラ 9.ベンヤングス 10.ジョージフォード 11.ジョニーメイ 12.オーウェンファレル 13.マヌツイランギ 14.アンソニーワトソン 15.エリオットデイリー

16.ルークカーワンディッキー 17.ジョーマーラー 18.ダンコール 19.ジョージクルーズ 20.マークウィルソン 21.ウィリーヘインズ 22.ヘンリースレイド 23.ジョナサンジョセフ

前の試合オーストラリア戦からの変更点は、ジョージフォードを10番に戻し、ファレルとダブル司令塔の形を再びとったことである。

オーストラリア戦で上手くいったフォーメーションから今大会のスタンダードの形に戻したことはエディージョーンズにも何か意図があるのだろう。

試合内容

試合前

事実上の決勝といわれるこの試合はキックオフ前から火花が飛び交うこととなった。

ハカ、カパオパンゴの舞をしたオールブラックスだが、それを取り囲むようにイングランドがフォーメーションを組みハカに向かったのである。これは、結果を知った今だからこそ言えることなのだが、オールブラックスのハカの舞はいつもよりどこか自信がなかったように感じる。このフォーメーションもエディージョーンズの作戦の1つなのだろうか。

前半

試合開始からファーストトライまで

キックオフ直後からイングランドのファーストトライまでの一連のアタックは呼吸を忘れるほど美しく一瞬の出来事だった。

ハーフラインのラインアウトから外まで展開し、デイリー、ワトソンの2人でビッグゲイン。そこからの振り戻しでゴール前までいき、最後はツイランギがトライという形だったのだが、エディーらしいといった基本に忠実なアタックだった。

派手なパスなどはなく、個々の個性と、素早いサポートなどのチーム力、両方が合わさった素晴らしいトライだった。

前半7分 スコットバレットがジョニーメイに追いつく

オールブラックスは、ハーフライン付近でアタックしていたのだが、イングランドの13番ツイランギがパスをインターセプト、外にいたジョニーメイにパスをし、トライかと思われたシーン。そこで、スコット、ボーデンのバレット兄弟が素早くディフェンスに戻りトライを防ぐ。フランカーはボール付近に動き回るポジションなので、このスコットの動きは起用したスコットハンセンHCの期待に早速応えたものとなった。

前半中盤

オールブラックスの動きは固く、どこかいつもと違う感じを感じた。その象徴としては、3連続のラインアウトミス。特に、16分あたりでの敵陣深い位置で行われたラインアウトのミス。いくらオールブラックスといえども攻撃が気持ちよくできないことにはテンポが出ず、持ち味を出せない。

対してイングランドは近づいてくる白い壁のようなディフェンス、機関銃のような連続攻撃と、この日の試合をワールドカップの組み合わせが決まった時からプランニングしてたかのような、完璧の試合運びをした。

攻撃し続けるが点が取れないイングランド、持ち味が出せないオールブラックス

攻撃を続けるが、規律を乱さないオールブラックスにトライどころかペナルティをもらえず、なかなか得点することができないイングランド。しかし集中は切らさず、オールブラックスの攻撃の芽を摘み取り続けた。

前半26分1度だけ、オールブラックスらしい連続オフロードからの華麗なアタックがあったのだが、最後にはジャックグッドヒューをタッチラインに押し出して、オールブラックス連続攻撃を防いだ。

このシーンのように、今日のイングランドの守りはタッチライン際を走る選手を確実に外に押し出しているように感じた。コートの外に選手を出してしまえば、オフロードでつなぐこともできないため対オールブラックスにはとても効果的であるように感じた。

このシーンでもう1つ感じたことは不用意にキックをして、オールブラックスにクリーンキャッチをさせてしまえば自陣を脅かす位置までアタックをしてくるということだ。

ただ、イングランドのキッカー達は簡単に相手に背走させて、ランでつなぐことができないようにテリトリーを取得する効果的なキックを蹴り続けた。これにより黒いモンスターたちは、ハーフラインで檻を建てられたかのように大人しくディフェンスに邁進するしかなくなったのである。

イングランド 後半に向けて流れを維持する大きな3点を獲得

自陣で連続攻撃をするオールブラックスにイングランドの守りが炸裂する。

38分、アタックするもなかなか敵陣に入れないオールブラックスの攻撃の糸が途切れた隙をついてイングランドがターンオーバーを狙い、たまらず反則をしてしまうオールブラックス。

40m以上はありそうなキックだったが、ジョージフォードが丁寧に決め、3点を獲得。

10-0、イングランドリードで前半の戦いを終えた。

後半

後半開始 イングランドが試合を支配し続ける

流れを早く掴みたいオールブラックスだったが、開始早々ペナルティを取られてしまう。ハーフラインより遠い位置だったがこれをデイリーが狙う。結果として入らなかったが、ここからでも点を狙えるのだぞと、リードをされている相手に対して様々な面からプレッシャーをかけ続ける。

42分でのジョージフォードのキック、これが彼のキックの精度が一番わかるシーンだったと感じる。22mラインの内側にキックをしてしまえば、マークでフリーからのスタートをされてしまう場面だったのだが、22mギリギリ外の位置にキックをして、相手に判断を迷わせるキックをしたのである。このキックはすべてにおいて成功していて、相手得意のアンストラクチャーからの攻撃を防ぎ、さらにはマイボールになり敵陣深い位置でのアタックができるという最高の形を右足の1振りで成してしまうのである。

オールブラックス 自陣でのイージーミスの連続

43分セブリースの不必要なオフロードのミス、46分グッドヒューのパスミスと、相手のミスから攻撃を始めるのに絶好な位置でのミスはこの試合のオールブラックスの出来を物語ったものとなった。特にセブリースのオフロードミスは、ボールを離さずにそのままキープしていればよかっただけに悔やまれる。

相手の反則にたすけられたものの危うくトライを許してしまうところだった。

このように流れは一向にオールブラックスに傾かなかった。

55分 「セブリース」トライラインに迫るも、押し出される

54分、ハーフライン付近でのラインアウトから連続攻撃を続けたオールブラックスが、ペレナラ、ボーデン、サムケイン、ソニービル、セブリースと外への連続パスでトライラインに迫った。しかし、セブリースがタッチライン付近を走ってしまい、今日のイングランド得意のディフェンス、タッチラインへの押し出しをツイランギ、スレイドの2人に受けてしまう。

ここで、セブリースが内にステップを切ってボールを残せていたらオールブラックスはトライが取れたのではと思う。

56分 オールブラックストライ イングランド痛恨のイージーミス

56分、イングランドのラインアウトミスによりオールブラックスにようやくトライの瞬間が訪れる。

イングランドのラインアウトが乱れたところをアーディーサヴェアが拾い上げトライ。ようやくオールブラックスに得点が生まれた。

イングランドはこのラインアウトのミスは非常に簡単なミスだった。直前にコートリーローズが後退したのが影響したのか、まったくサインが合わなかったのである。

いままで目立ったミスがなかったイングランドだが、ゴール前の大事な位置でミスをしてしまった。

しかし、これで崩れるわけではなく、直後に3点を獲得している。

66分 サムホワイトロック痛恨のファウル オールブラックスに迫る時間のプレッシャー

オールブラックスは早く得点をしようと、攻撃を続けていた。そして、66分、ハンドの反則のペナルティにより、キックを得たオールブラックスだった。

ここで、サムホワイトロックが不必要な反則をしてしまう。プレーが切れた後に、ファレルに手を出してしまったのだ。

これにより自らに来たチャンスを相手に渡してしまったのだ。9点を追うオールブラックスにとっては、まさに痛恨の極み。

この時、私はイングランドが勝つと確信した。

70分 望みをつなぐデインコールズのラン しかしまたも白い壁に弾かれる

70分、セブリースのステップからペレナラ、コールズと繋ぎ、いいランをコールズが見せた。しかし、オールブラックスのサポートは遅く、それより先にイングランドがボールに絡み、ターンオーバーとなった。

このアタックでは通常のオールブラックスなら、素早いサポート、素早い球出しであっという間にトライになるのだが、今日のオールブラックスにそれを行う実行力がなかった。

イングランド圧巻の守り 歓喜の瞬間

オールブラックスは得点を取るために、意地の連続攻撃を行っていた。だが、なんど続けてもイングランドの堅いディフェンスに止められ、時間だけが過ぎていく。

そして、12点差のまま終わりを告げるドラの音が鳴り響く。オールブラックス万事休す。最後も、イングランドの堅い守りにオールブラックスがノックオンをしてゲームを終えた。

イングランドのファンが大きく喜びを表現するのとは対照的に、イングランドの選手、ヘッドコーチのエディージョーンズは落ち着いた表情で勝利を噛み締めていた。

これは、2003年以来の優勝のために決勝のことをすでに考えているからであろう。この意識の高さはエディーの率いるチームらしいなと感じた。

まとめ セットプレーの重要性

最近のラグビーでは、アンストラクチャーからの攻撃や、不意を突いたオフロードパスで相手を崩すことが重要とされている。そのためコンテストキックを多用するチームが多い。

だが、最も重要かつ基本なのはスクラムやラインアウトといった、セットプレーなのだとこの試合を見て感じた。

どれだけアタック、ディフェンスに優れていても、ラインアウトでミスをすればボールを失い、スクラムを崩したりミスをすることで相手にペナルティキックを与えてしまい、陣地を奪われ、3点を奪われるのである。これは、絶対に変わらない。

日本が快進撃ができたのも、スクラムで勝てたことで、試合の流れも得点も獲得することができた。

明日の準決勝も、決勝でもセットプレーで勝ったチームが勝利を手にすることができるのだろう。

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